Mathilda's monologue

Kitchen Moviegoreの独り言

Mの暴露…本!!!疑うべき人がいて。

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平成の歌姫浜崎あゆみの暴露本『M』。

こちらは令和の暴露したくなかったのに暴露されてしまった『M』。

どちらも深く傷を負ったことに変わりなく、時が経ってようやくあの時を振り返ることができる。

 

長い長い梅雨が明け本格的な夏日に入ったあの日、私は仕事の面接に来ていた。

オープニングスタッフを募集しているということで、まだ建設中ではあるものの面接に来て欲しいと言われパートとはいえパンツスーツで向かった。

面接場所の住所に着いたとき、まず違和感を覚えた。

私の面接はフィットネスジムの受付けだったのに、その住所は住宅街だったからだ。

しかし、住宅街とはいえその場所は工事中で車は6台ほど停められるスペースがあり、ジムだと言われても驚くようなこともない。実は、この場所まで夫に送ってきてもらい一緒に場所を確認したのだが、夫も「ここだね」とすんなり私を車から降ろした。

 

正面に入口がありノックをしても応答がなく、ドアも鍵がかかっているようだった。右手にもドアがありこちらは簡易で設置されたインターホンがあったので鳴らしてみたが応答がない。

ジムの連絡先に電話してみると、「あれ?なんでだろ?工事中なんで聞こえてないのかもしれないですね。左手に裏口があるからそちらから入ってみてください」と指示があり、電話を切り裏口に回った。

確かに左手に回ると裏口があった。が、やはり応答がないのでドアを開いた。

と同時に、ALSOKの警報が鳴り響いた。

 

私は工事してる人が倒れているのかなんなのか、心配になった。その日はとても暑い日だったから、私自身も汗だくだった。もちろん、ジャケットは脱いでいた。

連絡先に電話した。場所も裏口も工事中も合ってる。

「入ってみてください」

 

指示に従いドアを開ける。

そこにはキッチンがあった。ホワイトボードには「大好き♡」と」書かれてあった。

どうゆうことだろう…?事務所なのか?それにしても生活感があった。

…職場恋愛中?

と、そこへALSOKの車が見えた。

説明した方がいい。私は自ら車を追っていって、「ここですここです、私です!」なんていってかくかくしかじかこんな状況になってしまってすみませんと謝った。それで誤解が解けて解放されると思っていた。が、甘かった。

 

ALSOKはいろんなところに電話し始めて、私には「ここにいてください」と眼光鋭く言い放った。いやいや私面接に来ただけだからと心の中で思ったが、何かがおかしいという予感は…していなかったがここにきてやっと、何かがおかしいと思い始めた。 

連絡先に連絡すると、面接してくれるはずの社員は面接場所にすでにいて入口の前で立っているとのことだった。場所が違った。すぐさま住所を確認、ALSOKにも確認してもらったが住所と場所は合っていた。

なんなんだ。暑い。頭が回らないし、もう面接なんてどうでもよくなっていた。

 

そこへパトカーが1台到着。

事情を説明している最中に、さらにパトカーが1台。4人の警察に囲まれた。

免許証を出すように言われ、無線のようなもので照合を促していた。

これで私の名前は警察官に知れ渡った。

もう喉はカラカラだったが、その場から離れることは許されない。

特に張り切って見張ってるのはALSOKだ。すごく苛立った。その眼光に。

 

道ゆく人はみんな私を不審な目で見ていた。犬を連れたあいつ、何回ここを通るんだよと心の中でツッコミを入れた。パトカーにマーキングしようとしている犬もいた。

そこへ日焼けした作業着を着た厳つい男が2人とスーツの男が1人近づいてきた。自己紹介もなく、愛想もなく、眉間にしわを寄せながら近ずいてきて私を囲む警察に事情を聞いていた。

 

「面接場所、住所記載間違い、一般宅、住居侵入」

無線機で私の罪が報告される。

報告風に言ってるけど、私を単語で一発づつ突き刺している。グサッグサッと。

 

そしてここから私のすべてが暴露されることになる。

バックの中身をひとつひとつ出していくのだ。

財布、ハンカチ、ティッシュ、ハンドクリーム、歯ブラシセット、メイク道具、と女子力高めな品々はスルスルっと出して警官に渡し、メッシュのバックの中に吸い込まれていく。

女子ポーチとその中にはバファリン。意外にも薬はサラッと見ただけだった。

使い古したようなポーチじゃ恥ずかしいな…買い換えよとこの状況で恥じらった。

なぜか紛れ込んだ子どものおもちゃやシール。

そして履歴書。

 

そして、本が2冊。

余裕を持って面接場所に向かったから面接時間前に、その後迎えが来る前にと用意していた本である。

 

「オンナの値段」 鈴木涼美著 

「いい女の条件29」 小林悟著

 

何よりも見られたくなかった。

バックからひとつひとつ取り出し渡していく、警察に説明を求められて、警察が声に出して復唱する。なんであるかを。本のタイトルを。本をペラララとめくりながら。

 

本ていうのは、その本を選んだ人を限りなく現している。と、思っている。

パートの面接に来た、子どもがいるアラフォーがこの本から何を学ぼうとしているのか。

面接場所と間違えて一般宅に侵入し、ALSOKと警察に尋問されているこの女が、どこに向かおうとしているのか。

 

「し…資料です…」と言えばなんとなく許されるような気がしたから、言った。

 

手荷物検査?が終わって、ポケットもすべて裏返して、疑いが晴れた頃にはもう2時間経っていた。

途中でジムから連絡があり、「待ってますので何時頃になりますか?」と聞かれたが正直もう面接を受ける気力も体力も残っていなかった。

 

結局厳ついにいちゃんたちは刑事と鑑識だったらしい。

ドラマと違うじゃないか。

刑事からも警察からも解放され、残ったのはALSOKのおやじ。

なんと、「ご主人がこちらに向かっているので、1時間ほどお待ちください」と言いやがった。灼熱の太陽の下、さらに1時間、しかもこのおやじと。

 

本日3回目、泣きそうになった。しかしお騒がせ野郎である。罪悪感があった。私のミスで何人もの人を巻き込んでしまった。待つことにした。この豪邸に住むご主人様を。

その1時間の間に、またあの犬が散歩に来た。この暑いなか本日何回めの散歩かな?

今日1日を(正確には2.5時間)振り返っていた。

化粧も取れてるだろう、汗が流れた痕跡もあちこちにあるだろう、こんな格好であんな本を持ちながら、ご主人になんて言えばいいのか考えていた。

 

ふと、何も飲んでいないことに気がついて「自販機いっちゃ…」と言いかけたところに、おやじは「やめてください!!!」と被せて言い放った。

ダメですよね?っていう聞き方をしようとしていたのに。

 

1時間後、ポルシェが到着。ほえー。

ALSOKが意気揚々と説明しているのを離れたところから見てた。

説明な終わったようだ。すかさずALSOKに呼ばれ、謝罪した。ご主人…といってもわたしより若いような…は苦笑いで許してくれた。

ALSOK「ご自宅に入っていただいて、何か不審なことがあったら遠慮なく連絡所いてください!」キリッ!

 

何をいってるんだこの人。

まだ疑ってるんかよ。

私かれこれ3時間はいっときも離れずにこのおたくのALSOKしてる。

 心の中で泣き叫びながらも、とりあえず生存のためにオアシスを求めて去った。

 

この、人に疑われるという体験、自分のアホさ加減に少しの間立ち直れずにいた。

想像以上に傷ついて、ダメージを受けたのだ。

後日談もあるのだけれど、もう少し傷が癒えてからにしよう。

 

浜崎あゆみもこんな気持ちだったのだろうな…うん。うん。